都市に生きる人の身近な素材「つくりもの」

2011.11.11

鋳鉄、ステンレス、コンクリート、ガラス、アルミ……。都市に生きる人々にとって、今日一番身近な素材とは、そういったいわば反自然の、あるいは加工された「つくりもの」であろう。それらはどれもが硬質で光り輝き、同時にアンチヒューマンな、冷たい肌触りを持っている。そこからは、人に優しく語りかけるような暖かみや、素材の持つユニークな不均質性、肌理(肌のきめ)の細かいテクスチャー、それに自然な素材が本来的に有する記憶や時間などはほとんど望むことができない。

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また今日では、仮に都市の表面に自然な素材が見られたとしても、それはデザインの上辺を薄く着飾るだけの、きわめてファッショナブルな使われ方をしている。そのように均質化し、画一化する中で、建築家が東京・赤坂につくった「M.BUILDING」(一九九三年)は、人工的なイメージを、大きく逸脱するものとなっている。建築家はここで、前面道路に面してシリンダー状の塔を打ち立てた。その塔の上層部はコンクリート打ち放しで、表面に帯状の溝型鋼のアクセントが取りつけられており、この塔に独特の装飾性を与えている。こうした上層部だけを眺めると、この建築も先にいったような硬質なイメージのものに見えてしまうのだが、注目したいのはその上層部でなく、より低い箇所のデザインである。