破天荒な生活は、三一歳で一級建築士の資格を取ってピリオドが打たれる。本格的に設計に乗り出す。ただ、そのまま建築に本質的なまなざしを向けていなかったら、九州の腕のいい建築士で終わっていただろう。人生の転機は、一九八二年に建築雑誌が主催し、ヨーロッパ視察旅行への参加だった。「おまえはアホや。もっと歴史を勉強しろ。じぶんでとらえろ」と辛らつな言葉を浴びせられながら本物を目の当たりにした。圧倒された。何より驚いたのは百年、二百年……と世紀を超えて受け継がれた建物が、現代もしっかり使われて美しさを保っていることだった。
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頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。似たような感慨は、他のツアー参加者も抱いたに違いない。だが、象牙の塔で建築意匠を学んだだけの連中は「でも、日本は地震国だし、木と紙で家をつくってきたから仕方ない」と新築を礼賛する。欧州の様式美だけを新築にせっせと取り込んだ。建築家は独自の道を選ぶ。建築は長く使われてこそ、社会的資産として定着する、という本質を背負い込んだ。これは、工事現場で怒鳴られ、汗まみれになって建物と格闘してきたことと無縁ではないだろう。叩き上げの直観は、しばしば正鵠を射る。